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Jリーグ25年シーズン開幕特集②:攻撃力で勝負を挑む ― 川崎・横浜FM・湘南の“前へ出る力”を読み解く

Jリーグ2025/02/11川崎フロンターレ、横浜F・マリノス、湘南ベルマーレ、レイティング

 近年のJリーグでは、堅守速攻やトランジションの巧みさが重視される傾向にあるが、それでもサッカーの本質は「ゴールを奪うこと」にある。開幕直前特集第2回となる今回は、2024年シーズンにおいて高い攻撃力レイティングを記録した【川崎フロンターレ・横浜F・マリノス・湘南ベルマーレ】の3チームをピックアップ。それぞれ異なる哲学と個性を持つ攻撃型クラブが、2025年シーズンにどのような戦いを見せるのかを読み解く。

攻守の力関係:3チームのポジショニングは?


  
 分析結果をグラフに可視化したところ、川崎・横浜FM・湘南の3チームはいずれも「攻撃力レイティングで上位」に位置しており、得点を奪う力に秀でた“攻撃型クラブ”であることが確認できた。一方で、守備力レイティングでは軒並み下位となっており、「得点力はあるが守備に課題を抱える」傾向が共通している。
 
 

攻撃力・守備力レイティング可視化結果_川崎・横浜FM・湘南編
攻撃力・守備力レイティング可視化結果_川崎・横浜FM・湘南編



●川崎:攻撃2位・守備14位。新エース山田の得点力と、守備の再建がカギ。
●横浜FM:攻撃3位・守備17位。破壊力ある攻撃陣と脆弱な守備の両極端。
●湘南:攻撃6位・守備15位。2トップが躍動するも、中盤の主軸流出が痛手。

それでは、これら3チームについて個別に詳しく見ていこう。

昨シーズン8位:川崎フロンターレ ― 新時代へ踏み出す“攻撃の系譜”


  
✓攻撃力レイティング:1.03(2位)
✓守備力レイティング:-0.81(14位)
✓ホームアドバンテージ力:0.32(6位)

予想布陣:川崎フロンターレ
予想布陣:川崎フロンターレ


 鬼木達監督のもとで築かれた黄金期が終わりを迎えた2024年シーズン。川崎は長谷部茂利新監督のもと、転換期を迎えている。得点力はJ1でもトップクラスで、攻撃力レイティングは全体2位。昨シーズンは、特に後半戦にかけてのFW山田新の爆発的な成長はクラブの未来を照らす好材料となった。2年目の若武者は、7月以降ゴールを量産し、日本人得点王として一気にブレイク。攻撃陣の中心として今季も期待がかかる。

 中盤ではボール奪取能力の高い選手を揃えており、デュエル勝率やトランジションの鋭さは依然として高水準。攻撃へのスイッチを入れるポイントの明確さが、山田のスピードと決定力を最大限に引き出している。

 一方、守備の不安定さは昨季から続く大きな課題。リーグ14位の守備力レイティング、57失点という数字は、川崎本来の姿とは言い難い。さらに、CB高井に欧州移籍の噂もあり、守備陣の再構築は急務だ。高井は若くしてA代表に選出されるなど将来を嘱望されており、シーズン途中での流出となれば守備バランスに大きな影響を及ぼす。

 「新旧の交差点」に立つ今季の川崎が、伝統のポゼッションと新戦力の融合でどこまで上位に食い込めるかが注目される。


昨シーズン9位:横浜F・マリノス ― 鋭さと脆さが紙一重の“攻撃偏重型”



✓攻撃力レイティング:0.91(3位)
✓守備力レイティング:-0.93(17位)
✓ホームアドバンテージ力:-0.26(20位)

予想布陣:横浜F・マリノス
予想布陣:横浜F・マリノス


 21年2位、22年優勝、23年2位と近年安定した成績を残してきた横浜FMだったが、2024年は9位と失速。攻撃力は依然として脅威で、得点王に輝いたアンデルソン・ロペスを中心に、エウベル、ヤン・マテウスのブラジル人トリオの破壊力は健在だった。サイドからの鋭い速攻、中央での崩し、セットプレーと、多彩な攻撃パターンはリーグでも屈指である。

 だが、攻撃に人数をかけるスタイルが裏目に出て、62失点はリーグワースト4位。守備レイティングも17位と、後ろの安定感を欠いたことで勝ち切れない試合が続いた。特に、攻撃から守備への切り替えが遅れ、カウンターからの失点が散見された。

 オフにはDF陣を再構築。KVメヘレン(ベルギー)からサンディ・ウォルシュ、新潟からトーマス・デンを獲得したが、主力の畠中、小池の退団によって総合的な守備力が上がったとは言いづらい。GKには鳥栖から朴一圭、日本大から木村凌也が加入し、最終ラインの刷新を図る。

 2025年シーズンは、攻撃力をキープしつつも、いかにして失点を減らせるかが鍵。守備の立て直しが進まなければ、再び「攻撃的だが不安定なチーム」に終わってしまうだろう。


昨シーズン15位:湘南ベルマーレ ― 勢いのある2トップが光る、攻撃型の伏兵



✓攻撃力レイティング:0.69(6位)
✓守備力レイティング:-0.82(15位)
✓ホームアドバンテージ力:0.05(15位)

予想布陣:湘南ベルマーレ
予想布陣:湘南ベルマーレ


 最終順位こそ15位に沈んだものの、後半戦の好調ぶりは目を見張るものがあった湘南。特に注目すべきは、FW福田翔生と鈴木章斗による若き2トップの活躍。両者とも二桁得点をマークし、スピードとパワーを兼ね備えた福田、ポストプレーや低い位置に下がり起点となる動きが巧みな鈴木と、タイプの異なるコンビが好相性を見せた。

 中盤から縦に速い展開を仕掛け、攻撃時の迫力は上位チームに匹敵するものがあった。攻撃力レイティング6位という数字は、湘南の“前への推進力”が確かな武器であることを証明している。

 一方で、今オフに田中聡が広島へ移籍したことは、チームにとって大きな痛手。中盤の守備力・配給力ともに高い水準だった田中の存在は、攻撃を支える前提条件でもあった。田中のように守備からビルドアップまでを一手に担える選手の不在が、攻撃力低下を引き起こす懸念がある。

 湘南は、攻撃の良さを維持するためにも、中盤の再構築と守備ブロックの改善が不可欠。失点を減らしながら、2トップにボールを届ける流れを再構築できるかが、残留争いからの脱却に直結する。

ゴールに向かう姿勢が、未来を切り拓く


 
 Jリーグには「守備の安定」が重視される流れもあるが、攻撃力を武器に戦うチームは、観客にとって最も魅力的に映る存在だ。川崎・横浜FM・湘南は、いずれもゴールに向かう姿勢を明確に持つクラブであり、そのスタイルはサッカーの本質を体現している。

 2025年シーズン、攻撃的スタイルが花開くのか、それとも守備の脆さに足を引っ張られるのか。攻撃型クラブの真価が問われる一年が始まる。


*注:攻撃力レイテイング、守備力レイテイング、およびホームアドバンテージ力は2024年の試合結果をもとに算出しており、シーズンオフの移籍状況などは考慮していない

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